7/1(金)

28日に聞いた、戦前ブルースのピッチが実際とは違うという話が気になってしょうがない。そんなことがあるんだろうか、と思いネットで色々検索してみた。
まず、Wikipediaの「SP盤」に以下の記述
『国際的には“78s”または“78rpm record”呼ばれることが多いが、これは多くのSPレコードが78 rpmを標準の回転速度としているからである。しかし、SPレコードの回転速度は厳密には標準化されておらず80 rpmのものも多い。また、VG導入以前に、収録時間を伸ばす目的で回転速度を76 rpm以下まで落としている例も多く見られる。このため再生音を聞いて速度を調整する必要があり、これがSPレコードの規格上の大きな問題である』
 これはすでに大問題ではないか。VGというのは1950年頃導入された、テープを元にしたカッティング技術とのことなので、戦前は78回転と言うのがいい加減な目安にしか過ぎないということである。ダイレクトで溝を切っていく訳なので、当然、元のマスターテープというのは存在しないし、最初にカッティングされたプレスマスターそのものがすでに実際のスピードが判らなくなっているということである。しかも、戦前ブルースなんてものは、世界中に現存する比較的状態の良いSP盤を基にリシューしているのだ。僕が聴いていたロバート・ジョンソンや、チャーリー・パットンは、実際彼らがやっていた音楽とは違う物だったのか。
 さらに方々を検索すると、「戦前ブルース音源研究所」という、なんとも胡散臭いページにたどり着いた。
http://www.pan-records.com/
「生誕100周年。悪魔に魂を売った男、ロバートジョンソンの正体、これがやつの本当の歌声か?」と書いてあって、世界初のサンプル音源と解説を読み聴きするには、会員登録をしなさいとも書いてある。なんとなく、「無修正・素人・SM・顔出し動画」みたいな、ワクワクするが、多分インチキだろうパターンである。くわばらくわばら、と会員登録する前にサイト内を色々見てみる。
 これが、凄いのである。かなりの偏執狂的戦前ブルース検証者達で、一枚の写真や、音源から垣間見えることを、重箱の裏の継ぎ目の禿げた漆の端まで突っついて、哀しいことに新たな疑問にぶつかってしまう、というような事をやっているのだ。しかも、ブログを見ると、最新号の「ブルース&ソウル・レコーズ」で、ロバートジョンソンのピッチ問題について「戦前ブルース音源研究所」が紹介されているというのだ。桜井さんはこれを見たのだな、きっと。そして、おまけ情報として日暮泰文さんが「RLロバート・ジョンスンを読む」という新刊を出したという話もでていた。ゲッ!遂に日暮さんが動いたか!!なんでも、ことし5月で、ロバジョン生誕100年なのだそうだ。そういえば、先日も世界で1000セット限定という、とんでもないボックスセットが出ていたなぁ。
 どうやら「戦前ブルース音源研究所」というのは、まともに研究している人達だということが判ってきた。だいたい戦前ブルースでこんなことやったって儲かるわけ無いので、もしインチキだとしたら、とんだ取り越し苦労なのである。インチキでないのは判ったが、とりあえず、会員登録とやらをする前に、日暮さんの本を買いに行かねばならない。日暮さんの書く、ブルースの文章が、僕は大好きなのである。その時代や地域の考証と、ブルースマン達に対する深い思い入れ。いまや決して見ることの出来ない、その時代のその場所の、真っ黒いベールの中をのぞき見せてくれる。なにしろ、Sun Downという名字ですからね。
 正文館で、日暮さんの新刊とブルース&ソウルレコーズの最新号を買う。ロバジョン100周年特集&創刊100号記念だというBSRは、表紙が久原大地画伯のイラストだ。チラチラめくると、「えっ!!!」ロバート・ジョンソンの3枚目の写真が見つかったと書いてある。ほ・・・・ほんまかいなっ!若いぞ。10代のように見える。確かに指は異様に長い。いかんいかん。信じてはいかん。誰かがちゃんと検証するまで信じちゃいけません。日暮さんの本は、多分素晴らしそう。感動しそうだなぁ。本を買ってこんなにワクワクしたのは久しぶりです。
 興奮しながら帰って、遂に「戦前ブルース音源研究所」に会員登録。いきなり回転数を補正したロバート・ジョンソンの曲が各曲1分ほど聴けるようになっている。まず「Kind Heated Woman」。あ・・・遅い!!たっぷりと重く、重量級の推進力があるビート、そして、聞き慣れたモノより肉感的な声っ!!やべぇ!!!こっちが本物のような気がするぞ!!
 今回紹介されているのは、サンアントニオセッションの17テイク。う〜〜ん、まいったなぁ・・・。どうすりゃいいんだろう??
 SP盤からどうやって、本人がやったスピードを割り出したのかと言う疑問が当然出るが、そのことについてもブログやサイトに中で触れられている。ノギスで溝をはかり、当時の他のSPとかの莫大なデータをとり、カッティングマシンの機種を割り出し、それらにもと付いて、なにやら訳のわからん計算をしたりするのだが、僕にははっきりよくわかりません。申し訳ないが、今日は他の音楽を聴く気がしない。帰って日暮さんの本を読もう!!
by ahoinu_diary | 2011-07-02 23:33 | 2011.07